先生はかなりの本格派
私は高校生の頃美術コースのある学校に通っていた。6月になると青森市から日本画の先生がやってくる。先生は芸大の日本画出身で、高校生相手にもガチの技法を教えてくれた。例えば川の水や木漏れ日の表現に銀箔を貼っている(高価)。普通、学生とかアマチュアが使う箔はアルミ箔と言って安価な物を使いがちだが、先生は「銀箔、とっておいても酸化しちゃうから使っちゃお!」ってノリで使わせてくれた。しかも6枚くらい贅沢に。(絵のサイズはF20)
6月は日本画の季節
約1ヶ月かけて1枚の日本画を完成させるのだ。何を描いても自由。私はスケッチ実習で描いた寺下観音って場所の水彩のスケッチをもとに制作した。
岩絵具って超高価
先生は天然の岩絵具もたくさん使わせてくれた(岩絵具には天然と新岩の2種類がある)。天然の岩絵具は焼いて色に深みを出すことができる。松葉緑小をおたまで焼いて深い緑を作った。日本画の描き方はたくさんのレイヤーが重なってできている感覚に近い。この1枚だけでたくさんの技法と絵の具の種類とお金がかかっている。
描くまでに時間がかかる
岩絵具はアクリル絵の具と違って、絵皿に出した絵の具が乾いてもお湯と膠を加えれば復活する。朝早く学校に行ってホームルームの前にお湯を沸かして湯戻しをしたり、新しく自分の欲しい絵の具を溶くのが癒しの時間だった。モーニングティーを淹れている気分。
描いている時間が宝ものだった
日本画は油絵と違って手順を間違えると大変なことになる。絵の具の粒子の番号をミスると絵の具が乗らなくなったり。膠の分量をミスると絵が割れたり。とても繊細だけど大胆な技法もたくさんあって面白い。人生のうちでこんなにも贅沢に岩絵具を使って絵を描くことはこれから先ないだろう。この絵がめっちゃうまいかと言われればそうではないが、絵の具の重なりを見ていると当時の作業を鮮明に思い出すのだ。
Aika Abe
阿部 愛加
uxlab#04 - Bottow or Die -