私が高校生の頃、家の掃除をしていた時に、浴衣や着物の生地がたくさん出てきた。 その中でふと、私の目にとまった生地があった。「広瀬すずだ!!!!」というのも、当時公開していた『海街ダイアリー』という映画で作中、広瀬すずが着ていたものにそっくりだったのだ!おおぶりの葉っぱや自由に伸びていくツルがとても綺麗だと感じ、こんな浴衣が着たいなあと呟いてしまったいたことをよく覚えている。
「私が仕立ててやろうか」
祖母はそう言うと、木のものさしで私の身長や体型を軽く測り、「次の夏には仕上げてやるよ。」と宣言し、自室に消えて行った。
祖母は裁縫が得意だ
冬になると家族全員分、暖かい半纏を作ってくれる。 一人一人の好みに合わせて、布や形に気を遣い作るのだ。 それが毎年楽しみだった私は、祖母が浴衣を作ってくれるなんて、楽しみが二倍になった気持ちでとっても嬉しかった
翌年、祖母は宣言通り浴衣を仕上げた。 それは売り物みたいに綺麗で、一層祖母を尊敬した。早速その年の夏祭りにウキウキで着て行ったのだが、童顔だからか私にはあまり似合わず、撮った写真が全然盛れてなかった。似合ってないくせにウキウキなのも相まってすごく、滑稽に見えて、 それ以来、あまり着ていない。
今年、祖母は93歳になる。
幼い頃、共働きだった私をこんなに元気に育ててくれたのはほぼ祖母といっても過言ではない。だからこそ、当たり前な存在になっているからこそ、冷たくあたってしまうこともしばしばだ。 最近でも近所へお散歩に出かけたり、たくさんご飯を食べたり、ピンピンした様子で元気な祖母だが、いつ何があるかわからない。そんなこと考えたくはないけど。 あの時から着なくなった浴衣も、おばあちゃんの前で素敵に着こなして披露しなくちゃ後悔しそうだ。 ちょっと大人になった今なら似合うかもしれないしね。
Mana Yamanouchi
山之内 麻菜
uxlab#04 - Bottow or Die -