思い出のポチ袋

Mayu Irie

入江 真由

私の宝物は祖父母からもらった、メッセージ入りのポチ袋。
私の祖父母はどちらもマメなひとで、お小遣いが包まれたポチ袋に必ず一筆添えてくれていました。 一言書いてあるポチ袋をもらうたびに捨てられず、ずっと持っていました。

これは中学3年生最後の夏休み前にもらったポチ袋。
お手製のポチ袋にはよく広告の切り抜きが貼ってあってありました。ラッコがかわいい。ちなみに3年生の夏も部活で忙しくてずっと楽器を吹いていた気がします。全然ゆっくりできませんでした。

小学生の時、運動会前にもらったポチ袋。
小学校の運動会は祖母がお弁当を作ってくれました。ちょっとしなしなになった唐揚げとジャムのサンドイッチが大好きでした。5月になると、木陰でみんなでお弁当を食べている風景を思い出します。

500円玉が入っていたお手製の小さな袋。
味のある顔をした魚がお気に入りです。父に聞いたところ、魚釣りに行く時にもらったもののようです。祖父は魚釣りが好きで、私もよく連れて行ってくれました。大きめのエイがかかって釣り竿が海の中へ引き摺り込まれたり、小アジが釣れすぎて翌日祖母が1日かけて南蛮漬けにしたり。堤防で竿を見張りつつ、夜の静かな海を眺めながらみんなでご飯を食べるのも楽しみでした。

高校に入学してすぐの頃にもらったポチ袋。
高校に入って1ヶ月経たずに地震があって学校は休校になって色々大変でした。この時祖母は病気で入院していました。週末に家族でお見舞いに行っていたのを覚えています。入院中でも祖母はいつもにこやかで、お見舞いに来た従姉妹一家や親戚の人も交えて談笑するひと時が私はちょっとだけ好きでした。祖母は割と病気がちだったのでこの時もまたすぐ戻ってくるんだと思っていました。祖母の病気は予後がよくなかったことを、祖母が亡くなってから知りました。

祖母が亡くなってから後のポチ袋には必ず「おばあちゃんより」と書いてあります。
私はこれをみると、祖母が大好きだった祖父の、寂しそうな目を思い出して胸がきゅっとなります。 それから1年とちょっとして、祖父も亡くなりました。

祖父母とお別れして4年。
ずっと引き出しにしまっていたものを取り出して見返していたら祖父母と過ごした日々が脳裏に浮かび上がってきました。祖父母の家で過ごした時間は穏やかで、私にたくさんのことを教えてくれました。うまくいかないことがあっても、ここに書き記された祖父母の言葉たちと思い出が私を励ましてくれるのです。