フィルムで伝える気持ち

Noa Kenmochi

剱持 乃愛

2020年4月、春。
世間は自粛を強いられ自由に外出ができない日々。大学は新学期開始が1ヶ月延期。
趣味もしたいこともなかった私は、このままじゃだめだと思い、興味のあったフィルムカメラをメルカリで購入した。

このカメラが私の世界を広げてくれるなんて当時の私は思いもしなかった。

数日後、早速家にカメラが届いた。今後私の相棒になるカメラ。

時代を感じるフォルム。
カメラを持った時の重厚感。
前の持ち主が大事に使っていたことがわかる使用感。
ファインダー越しの世界。
シャッターが落ちる音。

思っていた以上にハマり、家の中や外の景色など、日常の記録をたくさん撮った。
でもフィルムは枚数が限られているし、現像するまで確認することができない。
その不便さが私は好きだと思った。
フィルム特有の不便さがあるからこそ、その時その時を逃したくないし、
大事に撮りたいと思った。

撮り溜めていたフィルムを現像し、写真を見る。
フィルムにしか出せない色味やザラザラした質感、感光により変化してしまった写真。
私がフィルムの沼にハマるのに時間はかからなかった。
フィルムは、私自身がその時に抱いた感情や思いが写真にそのまま現れている気がして、
なんだか嬉しくなった。

「私って何が好きで、どんな人達と時間を共にして、どんなものを見ているのだろう。」
その答えが写真となって現像されるのだ。
ぼやけていた私の世界が、少しずつはっきりと見えてきた。

 

特にはっきりした私の好きな時間が、大好きな人達と過ごす時間。
自分にとってこの瞬間が、ほんとうに幸せで、愛おしい。
普段口では言いにくい感謝の気持ちも、全部シャッターに想いを込めて伝えたいと思うようになった。
それが私らしさであり、自己表現なんだと思う。

それから約2年間撮り溜めてきたフィルム写真は全部私なりの愛おしさ、懐かしさであり、周りの人への感謝の気持ちが込められている。

この相棒カメラで写真に収めることが、私なりの愛の形。