擦り切れたリボン

Shijo Saaya

四條 沙彩

私が紹介する宝物は新体操のリボンです。
私は小学二年生から中学二年生までの6年間、新体操を習っていました。このリボンは私が初めて個人演技で使った手具になります。

小学生の頃に、同じクラブチームの先輩の演技や大会などを通して自分も個人演技がやってみたいなと漠然とした憧れがありました。
中学生になって、個人演技をさせてもらえるようになりました。従来のおままごとリボンではなく競技用のリボンを使えるようになったことと、一人でフロアに立てることがとても嬉しくて、母と一緒にウキウキとした気持ちでリボン選びをした記憶があります。

「やってみたい!」の一心で個人演技に挑んだ為、従来の練習内容と比べて、そのハードさに心が折れかけました。筋トレや柔軟などの身体作りトレーニングが辛くて時には泣きながら練習している時もありました。技の練習や手具操作などの基礎練習も同時に行いましたが、コーチの求めているレベルに追いつかず苦労しました。しかし月日が経ち、苦しかった筋トレがスムーズにできるようになったり、技が様になってきたりして、普段厳しいコーチから「できるようになってきたね」と褒められて「もっと頑張ろう」という気持ちになりました。毎回練習が終わると、反省ノートにびっしり感想を書いていました。

私の所属していた新体操チームは、他のチームと少し異なった指導方針をしており、スキルよりも人間力に重きを置いていました。これは性格の良し悪しという意味ではなく、選手として練習に挑む姿勢のことを指しています。特に関係者(コーチや保護者、練習場を貸してくれる施設など)に対する礼儀には厳しかった思い出があります。その他、練習生に対する気遣いやチームでの立ち回りなど「周りの気持ちを考えながら、みずから行動を起こす」ことが求められました。常にピリピリとした練習環境の中でよく頑張っていたなと我ながら思います。

自分で演技を考えて人前で披露する楽しさを経験したり、できないことが少しずつできるようになっていく感覚を知ったり、コーチや他の練習生とのコミュニケーションが上手くいかなくて苦労したり…新体操を通してたくさんの学びを得られました。楽しかったことよりも辛かったことの方が多く記憶に残っていますが、こうして時を経て、自分を振り返ることで精神的な成長を感じたり、当時は気が付かなかった他者の気持ちが理解できたり、新体操で得た社会性はとても大切なものだと思っています。
この「擦り切れたリボン」は私の頑張った思い出が詰まった宝物です。長きにわたって新体操を習わせてくれた両親にとても感謝しています。