陽だまりとごろごろ
私とお宝の出会いは9年前の母の誕生日。
部活から帰るとリビングに小さな段ボールが置かれていて、中から音がカサカサなっていた。
父から母への贈り物らしい。
箱を開けた瞬間、私は奇声をあげながら膝から崩れ落ちた。
そこに入っていたのは、クリクリのおめめでこちらを見つめる小さな茶色い毛玉だったのだ。
何かを見てあんなに胸がドキドキしたのは初めてで目が離せなかった。多分これを初恋というのだろう(?)。
その小さな毛玉にういろうと名付け、その日から私の日常はハッピーハッピーハッピーになった。
ういろうは全てが愛おしく、そこら辺に落とす毛も、髭も、うん○も全部可愛く感じている。
狂った愛を持ち始めた石田家はういろうが落とした髭を集めて羊(やぎ)の置物に刺して保管し始めた。
ブラッシングで集めた毛を丸めて分身を作ったり。
高校で初めて親元から離れた時もういろうを身近に感じるために分身を下宿に連れて行って擬似ういろうライフを送った。
愛の証拠といえばペアルック。母にお願いしてお揃い柄のシュシュとスカーフを作ってもらった。
ういろうにスカーフを付け私はシュシュで髪を束ね、ウキウキで頭を振りながらういろうに見せた。
「ういろう、私とお揃いだよ!嬉しいね。」
あの時ういろうが私に送った冷たい視線は今でも忘れられない。
ういろうは1日のほとんどを寝て過ごしている。
お気に入りのかごとか、人の布団の上とか、太陽の下とか、いつもどこかでゴロゴロしている。
ういろうと過ごすそんな日常が私にとっては陽だまりのように暖かいもの。
ういろうは今日もどこかでのんびり寝ているのだろう。
結論、ういろうは存在しているだけで愛しいのだ。
世界中にもういろうみたいに、いるだけで私たちを幸せにしてくれる子がいるんだろうなって思う。
私と同じようにういろうの仲間たちがお宝の人、ぜひ楽しい日々を送ってくださいね。