嶽本野ばらと、私の黒歴史

Kamei Hisa

亀井 陽咲

私の宝物は、“過去の自分”と、自分の唯一の居場所だった“嶽本野ばらの世界”です。

物心ついた頃から、私は皆とは違うものが好きでした。だから、みんなと話を合わせることはとても難しいことでした。
今と違って全然明るくなかったし、いつもクラスに馴染むことができませんでした。特別に仲の良い子が1〜2人いれば、それで充分でした。

そんな私が嶽本野ばらに出会ったのは、17歳のときです。

当時、夢中になっていた90年代のヴィジュアル系バンドをきっかけに、ロリィタファッションに惹かれていました。
ロリィタファッションに憧れて『下妻物語』という映画を観ました。
バリバリにロリィタな竜ヶ崎桃子と、バリバリにヤンキーな白百合イチゴ。
彼女たちは「普通」とは違うものを愛して生きていました。
周囲に合わせることに必死だった私には、彼女たちの姿があまりにもまぶしく感じました。

竜ヶ崎桃子が愛する「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」のお洋服が欲しくて、隣の県まで買いに行きました。
けれどロリィタのお洋服は高価で、高校生の私には到底手が届きませんでした。
結局、靴下だけを購入しました。
これが私にとって、初めて手にしたロリィタアイテムでした。

嶽本野ばらの物語に出てくるのは、周囲と違うことに苦しみながらも自分を貫こうとする人たちばかりでした。
生まれてこの方、中二病を拗らせていた私は、彼らのような孤高の存在に憧れ、周りに合わせることよりも自分を貫こうと決めました。
当然、友達は本当に少なかったです。休み時間は教室で嶽本野ばらの小説を読んでいました。
でも当時の私は、それを誇らしく思っていました。中二病だったので。

今思えば、黒歴史です。
それでも、周りに合わせることに苦痛を感じ、居場所を持てなかった私にとって、嶽本野ばらは唯一の理解者であり、居場所でした。
あの頃の私は、自分を理解してくれない周りの人たちのことなんて、理解する必要はないと思っていました。
そして、自分の世界に閉じこもっていたのです。

大学生になって、知らなかった世界をたくさん知りました。
やっと、周りの人の意見や価値観にも耳を傾けようという気持ちになれました。
そういう考え方ができる今の自分が、私は好きです。

それでも、あの頃の自分も嫌いにはなれません。
好きなもの以外には興味を持てず、友達も少なく、クラスにも馴染めなかったけれど、苦しみながらも自分を守り続けたあの頃の私が、竜ヶ崎桃子みたいでかっこいいなと思います。