ふたりのタイガー

Nomizu Rei

野水 澪

私にはくっちゃんという幼なじみがいる。
小学1年生のクラスで名簿が近かったことで仲良くなり、それからは小中高と毎週のように遊んでいた親友だ。

そんなくっちゃんが、私の16歳の誕生日にプレゼントしてくれたのが、このトラのぬいぐるみである。

まんまるふくふくしていて、なんとも愛嬌のあるフォルム。
のんびりした性格のくっちゃんにも、ちょっぴり似ている気がする。
私はすぐに気に入り、もちもちとしたその触感を日夜楽しんでいた。

1年後の誕生日、くっちゃんはまたプレゼントをくれた。

トラのぬいぐるみである。
ちょっと去年のより細長い気はするが、どう見ても去年もらったものと瓜二つの、トラのぬいぐるみであった。

私が困惑していると、くっちゃんは机の上に置いてある去年のトラに気づいた。

なんとくっちゃんは去年トラのぬいぐるみをあげたことを完全に忘れ、その上でまた同じトラを選んでくれたのだという。そんなことあるの?!

照れるくっちゃんがあんまりにも面白くて可愛くて、私は本当にいい親友を持ったものだと思った。

そんなくっちゃんも私も大学4年生になり、お互い前より会える機会は減ってしまったが、今でも毎年誕生日をお祝いしあっている。

ふたりの思い出の詰まったタイガーたちは、都会のさみしい一人暮らしにも、そっと思い出の花を添えてくれることだろう。