集め続ける本たち

Sato Yumi

佐藤 侑海

私にとっての宝物は、今まで集めてきた商業BL本です。
正直、急に引っ越しが決まったとしても、新しい本を買えばいいや〜と思うタイプなので、今回の「私宝展」のテーマを決めるのにかなり悩みました。
でも、大学生になるタイミングで実家から持っていく荷物を整理していた時、ふと「自分が飽きずにずっと好きなものって何だろう?」と考えながら、集めてきた商業BL本が目に留まり、これか、、、?と。

もちろん少女漫画や少年漫画も好きですが、商業BLは、登場人物たちの感情や人間関係に没頭しながらも、私はあくまで「傍観者」として静かにその世界を見守ることができます。物語に引き込まれつつも感情的に巻き込まれることなく、客観的にそのドラマを楽しめる距離感が、私にとって心地よく、読んでいると本当に楽しい気持ちになれます。

綺麗風ににまとめてみたんですけど、正直に言うと商業BLは設定がブッ飛んでいて面白いというのが一番大きい理由です。少女漫画のような切なさやトキメキがありつつ、その登場人物は一国の王子様や、マフィアのボスという非現実的なスパダリから刑事などの職業人の他、サラリーマンや学生とかなり設定が幅広く、しかもテーマは王道ものもあれば、タブーを描いた意外とダークな世界観も混在していて1ジャンルではあるものの世界観が幅広いことがハマった理由かなと思います。
いい意味でなんでもありですよね。

私が特に好きな作品は、文乃ゆき先生の『ひだまりが聴こえる』です。
この作品は、突発性難聴を患った大学生・杉原航平と、明るく前向きな同級生・佐川太一の交流を描いたヒューマンラブストーリーです。
いわゆる「胸キュン!」なシーンもありますが、私がこの作品を大好きな理由は、むしろ穏やかなシーンが多いからです。硬く張りつめていた体の筋肉がほぐされるような、心が洗われるような感覚を感じることができる作品です。
(商業BLでは珍しい!!!!!)

航平は、難聴のために相手の言葉をうまく聞き取れず、何度も聞き返しても面倒くさがられることが多い。自分は「普通」の人間ではないと感じ、感情を表に出すことを避けるようになります。そんな航平の前に現れたのが太一。まっすぐな性格で、他人に対して壁のない太一は、航平のガードをあっさり突破し、少しずつ二人の距離が縮まっていきます。

特に心に残ったシーンは、第一巻のこのセリフです。

「聴こえないときはそう言えよ。何回でも聞き返せよ。なんでお前のほうが遠慮してんだよ。聴こえないのはお前のせいじゃないだろ!」

「聴こえないからって好き勝手言っていいはずがない」その考えが太一にとっては当たり前のことかもしれないけど、ずっと「わかってもらえないのは、自分のせいだ」「伝わらないのは自分のせいだ」と思っていた航平に、そうじゃないんだ!と太一が真っ直ぐ伝えるシーンが、今でも一番大好きな瞬間です。

きっと社会人になっても、親になっても、ず〜っと集め続けるんだろうな〜って、この展示を通してなんとなく思いました。自分の中で「宝物」として大切にしてきたこれらの本たちが、少しでも誰かの心に届いて、共感してもらえる瞬間があれば嬉しいです。展示には入れなかった電子版の好きな作品もたくさんありますが、展示している本たちは読書OKなので、気になる方はぜひ手に取って読んでみてください!
(実家にいた頃、私はこれらの本をベッドの下に隠していました)